Managed DR for i、Managed DR Liteを組み合わせて、 コストと期間を抑えながら IBM iのDR環境の構築に成功
企業名 | 川口化学工業株式会社 様 |
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業界・業種 | 製造業 |
サービス:Manafed DR for i、Managed DR Lite
効果:コストと期間を抑えた、内部統制強化の一環としてのIBM iのDR環境構築
Before
- 内部統制の強化に伴い、事業継続を見据えたIT環境の整備が課題に
- 基幹系システム/情報系システム共に自社内のみで運用し、バックアップを保管
- 人手とコストを掛けずに効果的なDRを構築、運用したい
After
- 基幹系システムの障害時にはDRサイトへ切り替えて縮退運転
- 情報系システムのバックアップは遠隔地のデータセンターで保管
- 既存本番環境の再構築を伴わず低コスト、短期間でDR実現
内部統制強化の一環としてDR環境構築が課題に
ゴム添加剤を中心とした化学薬品を製造、販売している川口化学工業では、内部統制の強化を進めてきた。その一環として2010年頃から取り組んでいるのが、事業継続を見据えたIT環境の強化だ。川口化学工業には受注・出荷・売上などを管理する基幹系システムと、事務や社内のデータ共有に使用する情報系システムが稼働しており、万一の際にこれらのシステムの稼働維持やデータ保護が必要だと考えられていた。
「当時使っていたサーバー機器のリプレイスが2012年10月に予定されていたので、そのタイミングでのカットオーバーを目指してDR環境を構築すべく取り組み始めました。東日本大震災の1年くらい前のことです」
プロジェクト発足当初を振り返ってそう語るのは、川口化学工業株式会社 取締役 総務部長兼経理部長の荻野 幹雄氏だ。工場には自社発電設備もあるため、東日本大震災の際にも影響を受けることはなかったという。しかし、震災の被害を直接受けた場合にも事業を継続させようと思えば、電源だけの課題では済まない。川口本社サーバールームとは離れた場所に、データやシステムのバックアップを持たなければならない。こうした震災の経験も踏まえながら、川口化学工業のDR構築は進められていった。
DRの具体的な要件を煮詰めていくに当たり、取引のある複数のインテグレータから情報収集が行なわれた。CSIソリューションズもその1社だった。
要件定義の進め方について、川口化学工業株式会社 経理部の上村 靖則氏は次のように語る。 「どの程度の対策を取るとどの程度のコストが必要なのか、そういったことを相談させてもらいながら、実際の要件に落とし込みました。中でも、これまでに社内システムをサポートしてもらっていたCSIソリューションズさんからの提案は、社内システムの現状にも合っていて要望に近かったので、こちらをベースに要件を具体化していきました」
システムごとに必要な機能を選別、重要度に応じてソリューションを組み合わせ
川口化学工業のDRのもっとも大きなポイントは、基幹系システムと情報系システムとで個別の対策を選択した点にある。受注や出荷を管理する基幹系システムに障害が発生した場合、出荷が滞り、納期を守れなくなる恐れがある。それに対して情報系システムの場合は、社内のコミュニケーションが滞るものの、短期間であれば電話等の代用手段で対応できると上村氏は語る。 「大きな違いは、基幹系システムの障害はお客様に迷惑をかけてしまいますが、情報系システムの障害は社内の従業員が我慢すれば済むということです。前者に注力して後者は最小限の対策にとどめることで、コストを抑えながら事業継続を効果的にカバーできると考えて要件を固めました」
最終的な要件では、情報系システムについてはデータセンター側に遠隔バックアップを行なうのみで十分とされた。万一の際には、データセンターに保管されているバックアップから数時間もしくは数日以内にシステムを復旧するという段取りだ。一方基幹系システムについては、短時間でシステムを復旧できるよう、データセンター側にDRサイトを構築することになった。基幹系システムのDRサイトについては、障害時の切り替えや普段のバックアップ運用などもアウトソーシングする方針も盛り込まれた。社内でITを担当する従業員が実質2名しかおらず、災害等の際に十分な人手を確保できない、運用場所までたどり着けないなどの恐れがあるためだ。
具体化した要件に基づき、改めてインテグレータ3社からDR構築の提案を受け取った川口化学工業。比較検討の結果、パートナーとして選ばれたのはCSIソリューションズだった。
その経緯について荻野氏は次のように言う。
「ほぼ同条件で提案をもらいましたが、提案力やその裏付けとなる技術力には違いを感じました。これまでの取引に基づく信頼関係もありますし、安心して依頼できるパートナーであることも大きなポイントになりましたね。やはり最終的には、人と人のコミュニケーションを大切にして、きちんと意志疎通できるパートナーでなければDRのような重要な取り組みを任せられません」
信頼できるITパートナーとDR環境を得て増す安心感
2012年9月に完成したDR環境で基幹系システム用に採用されたのは、Managed DR for iというソリューションだ。IBM i(旧AS/400)のリアルタイムバックアップと障害時のDRサイト運用が可能な、他に類を見ないソリューションで、既存の本番環境に専用ソフトウェアを設定するだけで、遠隔地のデータセンターにDR環境を構築できるのが大きなポイントだ。一般的なIBM i 向けDRソリューションでは、本番環境も含めてデータセンターに移管し、システム全体を再構築するため、多大なコストと移行作業を伴う。それに対してManaged DR for i は、稼働中の既存システムにほとんど手を加えないため、コストと構築期間を抑えてDR環境を構築できる。本番システムと全く同等ではなく、縮退運転が可能なシステムとして構築することで、さらにコストを抑えている。
情報系システムのバックアップには、Managed DR Liteが採用された。Windowsサーバーのデータを遠隔地のデータセンターに転送することにより、有事の際のデータ保護を担保するソリューションだ。川口本社に設置してあるサーバーに障害が発生した場合、システムの復旧作業を行なっている間に、データセンターからバックアップテープを搬送でき、データのリストアが可能となる。基幹系システムは可能な限り短時間で本番システムを復旧できるよう、現在でも川口本社内でバックアップを作成している。しかし、情報系システムでは、Managed DR Liteで取得されるバックアップだけに絞り込み、運用の軽減にもつながっている。上村氏は、今回構築されたDR環境についてこう評価する。
「切り替えテストの感触も良好で、これからは安心感を持って業務に当たれます。これまではごく少人数で運用していましたが、DR切り替え等の緊急対応にCSIソリューションズの力を借りることができ、安心感が増していますね」 今回は、基幹系システムの既存本番環境の再構築を伴わず、DR環境のみを構築することでコストを抑え、短期間で実現することに成功した。今後は、サーバー機器のリプレイス時期に合わせて基幹系システムの本番環境もホスティングへ移行し、さらに運用の負荷とコストを削減することも検討されているという。
「本番環境が手元にある安心感もあるのですが、コストや運用負荷とのトレードオフ、またこれからさらに進んでいくであろうネットワーク環境の信頼性向上を考えると、ホスティングはひとつの選択肢になってきます。そうした取り組みも、CSIソリューションズさんとの二人三脚で進めていければいいですね」
荻野氏は今後の展望とCSIソリューションズへの期待を、そう語った。
導入企業プロフィール
会社名 | 川口化学工業株式会社 |
本社所在地 | 〒101-0047 東京都千代田区内神田2-8-4 山田ビル8F |
事業概要 | ゴム用薬品を中心とした化学薬品の製造 |
URL | http://www.kawachem.co.jp/ |
1937年の創立以来、70年以上にわたって有機ゴム薬品、化学品の研究開発、製造、販売を行なってきた川口化学工業株式会社。多品種少量生産で、多様なニーズに応える製品を送り出している。主力となるのはタイヤやゴム工業用品に用いられるゴム添加剤で、自動車、電機産業の発展を支えている。 |