APIが実現する新しい基幹業務活用アイデア~IBM i とkintoneのAPI連携でモダナイゼーションを実現~

経済産業省が発表した「DXレポート」(2025年の崖)に象徴されるように、現在企業にとって基幹システムを含めた既存システム資産の有効活用(DX)が喫緊の課題になっています。そのために、既存システムを最新のテクノロジーを活用したシステムに進化させるモダナイゼーションと、IT人材不足や開発スピードの要求にこたえるために一般ユーザーでも活用できるローコード開発プラットフォームの活用が拡がっています。

このようななか、IBM i(AS/400)で基幹システムを運用している企業の皆様も対応にお悩みではないでしょうか。 今回は、IBM i のモダナイゼーションを、ローコード開発の1つであるkintoneを活用して実現する方法をご紹介します。

IBM i の現状と課題

1990年代以降、オープン化やダウンサイジングが急速に進んだ影響で、IBM i を基幹システムとして利用している企業は年々減っています。しかし、IBM i からオープン系システムへの全面的な移行は多大なコストがかかるうえ、システムの信頼性や既存資産のノウハウが失われてしまうといったリスクもあります。さらに、IBM i はアプリサーバーとDBサーバーが一体となっているためレスポンスが極めて速いというメリットもあり、今後もIBM iの利用を継続する企業は少なくないと予想されます。

IBM i を使い続けるうえで一番の問題となっているのが、技術者の高齢化です。IBM i の開発言語であるRPGを習得している技術者は50代が多く、今後もIBM i を使い続けた場合、技術者が定年を迎え不足していくのは明らかです。IBM i を利用しつづけるためには、視覚的に開発や改修ができるようにモダナイゼーションすることで、RPG技術者がいなくても運用し続けられるような対策が必要になります。

kintoneとの連携でモダナイゼーションを実現

そこで、本コラムでご紹介するのはkintoneを活用したモダナイゼーションです。IBM iの基幹システムはそのまま利用しつつもIBM i側の改修は最小限にとどめ、新規機能を追加する場合はクラウドサービスのkintoneで実現し、その間をAPIで連携するという方法です。kintoneは基本的な機能の開発はマウス操作で行うことができ、直感的にシステム変更ができるため専門的な技術が不要なので、RPG技術者にとってもスキル移管が容易です。また、kintoneはブラウザやモバイルから接続できるためテレワークにも適応しやすく、利用者にとっても利便性の向上が期待できます。

  • RPG技術者にとっても技術移管が容易なkintoneを利用
  • IBM i の改修は最小限に止め、kintoneで新規機能を追加
  • クラウドサービスであるkintoneでどこでもワークを実現

具体的な例として、IBM i で稼働している販売管理システムをkintoneのアプリとAPI連携して、業務をより効率化する方法をご紹介します。

方法はとてもシンプルです。商品の在庫数や納期などの情報管理、仕入先への支払い処理の部分はIBM iをそのまま使い続け、コミュニケーション等フロントエンドの部分をkintoneが担います。その架け橋となるのがオムニサイエンス社のAPI-Bridgeというツールです。API-Bridgeは様々なクラウドサービスとIBM i の基幹データをつなぐ製品で、このAPI-Bridgeにより、IBM i とkintoneのAPI連携を実現します。

API連携によるメリット

kintoneとAPI連携させることによってもたらされるメリットは大きく分けてふたつあります。

1.モバイル活用による業務の効率化

ひとつめは業務の効率化です。IBM i にある購買情報(納期、在庫数など)をkintoneに連携させることによって、利用者はブラウザやモバイルから情報を確認できるようになります。その結果、外出先や在宅勤務でのリモート接続でも操作が可能となり、場所の制約から解放されます。従来は営業マンが顧客からの納期問い合わせに対して外出先から一旦帰社しシステムにアクセスを行い回答していました。そこに要する移動時間や回答までのリードタイムを削減することができます。また、あらかじめモバイル端末に操作するためのツールをインストールしておく必要もありません。

さらに、API-Bridgeの設定によりIBM i とkintone自動連携が可能になるため、データをシステム間で移行する際よく行われるCSVでのエクスポート/インポートするなどといった手作業が発生しません。これにより、ヒューマンエラーによる抜け漏れやダブり、手戻りなどの問題も解消されます。さらに、システム間のデータ出入力作業の間に人が介入する事がないため、データを途中で改竄されるリスクも排除できます。 

2.社内・社外への情報共有の効率化

ふたつめは、情報共有の効率化です。社内だけでなく社外のユーザーにもkintoneを利用できるように設定することで、仕入先との発注連絡、納期確認、図面確認などのコミュニケーションに、メールや電話といった手段を使わず最新の情報を共有することが可能となります。これらの情報共有をメールで行う場合、その他多くの用件に埋もれて見落とされてしまうこともありますが、kintoneで情報共有を行えば、その他のメールに埋もれてしまうこともありませんし、要件ごとに情報がまとまっているため過去の履歴も追いやすくなります。また、レコード毎にコメントを付加する事ができる為、上司が指示を出したり、関係者が確認の為にメッセージを残したりする事も可能です。さらにkintoneは、ユーザーの言語設定が可能なので、例えば仕入先が海外であってもログイン時にユーザーの言語に表示言語が自動変換されるため翻訳の手間もかかりません。

社内外問わず広く利用できるようになる際、懸念されるのがセキュリティ面のリスクですが、kintoneはセキュリティ対策も万全です。IPアドレス制限やクライアント証明書による認証、高度なファシリティ要件が求められる金融機関向けのFISCに準拠したデータセンターの運用など、高い安全性を誇っています。また、データにアクセス権を設定することで他社ユーザーが閲覧できるデータと社内ユーザーしか閲覧できないデータを分けることができます。この他にも、社内では部署やユーザーごとに細かくアクセス権を設定することが可能です。納品や支払期限を安全かつ適切に管理することは、法令遵守だけでなく顧客や仕入先との信頼関係構築には必要不可欠です。

API連携を実現するAPI-Bridge

API-BridgeのAPI連携方法は2パターンあります。

ひとつは、IBM i をAPIサーバー化して外部システムからAPI経由でIBM iのデータをリアルタイムに更新・照会するパターンです。もうひとつは、IBM iをAPIクライアント化して外部システムのAPIを呼び出すパターンで、IBM iをトリガーとして外部システムに通知・更新したり、外部システムのデータをAPIでIBM iに取り込んだりすることが出来ます。上述のIBM i の販売管理とkintoneの発注申請アプリのAPI連携例では、IBM i 側からkintoneに対してデータをプッシュするふたつめのパターンを採用していますが、どちらのパターンを使用するかは、様々なニーズを考慮して選定することになります。

まとめ

IBM i を基幹システムとして利用している企業にとって、IBM i のモダナイゼーションは重要な経営課題のひとつです。特に中堅企業は、よりスピーディーに低コストでシステム変革を実現することが求められています。そこで、今回ご紹介したように、バックエンドの基幹業務は既存システムの利用を継続しながら、社内外との情報共有やコミュニケーションを行うフロントエンドではkintoneを活用することで、短期間かつ段階的に品質担保しながらモダナイゼーションを実現することが期待できます。 

もちろん上述の販売管理業務での活用例以外でも、IBM i をモダナイゼーションさせることで多くのメリットが見込まれます。その一方で自社のIT環境や業務にマッチするのか不安に思われることも多々あるかもしれません。SCSK Minoriソリューションズでは、システムを選定する前にPOC(Proof of Concept)を実施することをお勧めしています。自社の環境・業務において具体的に改善すべきテーマと想定される効果を設定し、部分的かつ試験的に実現する可能性をPOCで検証します。この検証結果課題を踏まえて、実際の導入・構築を進めるか見直しを行うか検討することが成功のカギとなるためです。

SCSK Minoriソリューションズは、合併前の旧CSIソリューションズが創設された1989年よりIBM i を提供しており、IBM i の開発スキルと多くの実績を持っています。今回ご紹介した事例以外にも、様々なツールを活用してIBM i のモダナイゼーションをご支援しています。IBM i のモダナイゼーションについてお悩みでしたら、ぜひ弊社にご相談ください。

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